あらゆる企業組織がHTML5を無視すべきではない理由

HTML5

先日書いたCSS Nite in AOMORI, Vol.6 with Microsoft終了しましたでも触れたように、今年のCSS Nite in AOMORIのメインテーマの一つはHTML5でした。

言葉だけ見ればただ単にWeb制作者が配慮するべき新しい技術であり、HTML5に対応することでFlash Player無しに動画が再生させられたり、Flashが再生できないiPadやiPhoneでのアニメーションを表現することができるといった程度に見られることが多いかもしれませんが、HTML5への対応はもっと大きなことと関わりがあります。

独占的プラットフォーム戦略に対する対抗策としてのHTML5

先のCSS Nite in AOMORI Vol.6の中でも、HTML5は様々なデバイスでの稼働に対応することができ、CSS3やJavaScriptと組み合わせることで多様な可能性を広げつつあるというお話がありました。この「多様な環境・デバイスに対応」という点がポイントです。

日本企業復活へのHTML5戦略 アップル、グーグル、アマゾン 米IT列強支配を突き崩す日本企業復活へのHTML5戦略」では、現在普及が進むスマートフォンやタブレットPCといった新しいデバイス分野において多くの利益を享受(というより独占)しているのがアップルとgoogleであると指摘しています。この分野における二社の共通点は、アップルがApp Store、googleがgoogle playといった、それぞれのデバイスで使用できるアプリ(ソフトウェア)のプラットフォームをほぼ独占していることです。

プラットフォームの独占だけならまだ良いのかもしれませんが、両社はその圧倒的なプラットフォームの力を背景に、関連する企業への圧力を高めています。例えばアップルはiOSデバイスの販売提携元に対して高いノルマを設定していることは有名ですし、googleもその意向に従順な企業に優先してAndroid OSの最新バージョンに関する情報を提供する場合があるようです(情報を提供してもらえた企業は他社より高いバージョンのAndroid端末を、他社より早くリリースできるメリットがあります)。

こういったプラットフォームの独占状態を打開する有力な手段として、Webブラウザさえあればどの環境やデバイスでも稼働させることができるHTML5という技術が注目されるようになってきました。まだ各OSのネイティブアプリと比較すればHTML5で構築されたWebアプリは動作や機能面でネイティブアプリに劣る面が多いですが、今後の技術・仕様の高度化などを考えれば両者の差は縮まってくると予想されます。そうなった場合に現在の独占的なプラットフォームの構造は崩れ、多くの企業にチャンスが訪れるのではないかと考えられます。

日本企業がHTML5に関わるべき理由

日本企業復活へのHTML5戦略」の中で筆者は、日本企業に対してHTML5への関わりを強めるよう指摘しています。家電などを作っている企業などは一見Webの技術であるHTML5は全く無関係のようにも考えられますが、今後あらゆるデバイスや機器がICTの技術と連携されていく過程で、HTML5の技術がそれら今まで無関係だった機器にも応用されていく可能性があります。事実、カーナビなどではすでにスマートフォンやタブレットPCと連携する実例もあります。

日本の企業が行うべきHTML5への関わりとして、筆者はW3C(WWWの技術策定団体)の会議に積極的に参加することで、今後HTML5の仕様として盛り込むプロパティの中に、企業の製品やサービスに関わりが深くなるであろうものを積極的に推進すべきと指摘します。W3Cの仕様はグローバルなものですが、例えばepub3の仕様で上げられるルビや読み仮名といった日本独自の機能など、ローカライゼーションに配慮した仕様や、企業固有の強みを活かせるような仕様をW3C内で推し進めることで、将来的に自社の製品・サービスがそれらの仕様に対応したイノベーションを起こす確率を上げることができるかもしれません。

現状ではW3Cへの参加費や英語でのコミュニケーション、長期的な投資として捉えにくい等の理由でカンファレンスに参加している日本の企業は少ないももの、徐々に増えているそうです。

非常に大きな可能性を秘めたHTML5。これに対応していくことは単にWeb業界だけではなく多くの組織にとって重要だと考えられます。

余談:当方が制作するWebサイトは去年からほぼ全てHTML5対応です。実習生(今はスタッフ)に自由に勉強させていたらほぼ最初からHTML5での実装を覚えていったのですが、今思えば自由にさせておいてよかったなと思っています。

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