注目が集まる明治・大正の世代

海賊とよばれた男 上ここのところ明治・大正生まれの著名人への注目が集まっているような気がしていたのでメモ。


この件について個人的な最初のきっかけは、2013年の本屋大賞に百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」が取り上げられたことでした。本書に登場する主人公、国岡鐵造のモデルは出光興産の創業者である出光佐三で、1885年(明示18年)生まれです。実際に「海賊と呼ばれた男」の上巻を読みましたがとても良い内容で、泣きながら読んでいました。

作者の百田尚樹さんは情熱大陸に出演しており、その中で講演会の場面があるのですが、「大正の世代は一言で言うと、人のために生きた世代だった」「これほど偉大な不幸な世代はなかった」と涙をこらえながら話す場面は何故かこちらもぐっとくるものがあります。

また、第四代経団連会長で東芝の元社長でもある土光敏夫も最近になって関連の著作を書店で目にする機会が多くなったように思います。土光敏夫も1896年(明治29年)の明治・大正世代です。ちなみに土光敏夫は私と同じ岡山県の出身で、同郷の偉大な先輩がいると思うとまた嬉しくなります。余談ですが神谷美恵子も岡山出身で、岡山の誇りを一人密かに喜んでいたりします。

銀行王 安田善次郎: 陰徳を積む (新潮文庫)また、銀行王と呼ばれた安田善次郎は1838年(天保9年)生まれですが、1921年(大正10年)に亡くなっているのでこちらも明治・大正の世代ということになります。安田善次郎の関連書も「銀行王 安田善次郎: 陰徳を積む」などを見かけます。

また、8月が近づいてきたこともあるのかもしれませんが、戦争に関連した書籍も書店の店頭に並ぶ割合が多くなって来ました。明治・大正の世代は戦前・戦後にも活動していて、敗戦で焼け野原になった日本を甦らせ高度経済成長期まで導いた功労者としての側面も多々あると思います。昨今の経済情勢や政治への不信など、現状打破への指針として過去の偉人達が遺した即席から学びたいという潜在的な意志があるのかもしれません。

実際、上で紹介した三人は政治や国の経済など大きな場面での活躍もされていますし、土光敏夫は強烈なリーダーシップで政界と経済界での奮闘を見せつつも、普段の生活は清貧で「メザシの土光さん」と言われたりもしています。安田善次郎もケチというレッテルを張られる一方で実際は「陰徳を積む」を実践していたという側面もあります。

資本主義や天井知らずの経済成長を無意識のうちに目指している世界の流れの中で、本当に経済的な、金銭的な成長が幸せにつながるのかという「脱成長」路線が密かに注目されつつあることも、過去の偉人が注目されつつある要因なのかもしれません。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」の通り、痛い目を見て後戻りできないような経験をする前に、過去の歴史からこれから先のことについて学んでおくことは様々な意味で有意義なことだと思います。

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