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グローバルに通用する異能を開花する (大前研一通信特別保存版 Part.VIII) 【読書レビュー】

グローバルに通用する異能を開花する (大前研一通信特別保存版 Part.VIII)レビュープラスさんから「グローバルに通用する異能を開花する (大前研一通信特別保存版 Part.VIII)」を頂いて読みました。以前頂いた前作も読ませて頂き、その時のレビューを見返してみました。「教育」というキーワードがポイントだと当時書いていましたが、本書でもそれは引き継がれています。そのため前作とコンセプトは似ている部分もありますが書名にもある通り「異能」というキーワードに派生したトピックが多々紹介されています。

本書でいう「異能」をひと言で言うと「特定の領域でダントツな能力を行使して、新たな価値を創造して社会に貢献できる人」という感じだと思います。なぜ著者が今の日本人に「異能」を求めているかといえば、今後世界で起こる変化に日本が対応するためだと言えます。それを危惧する例として、「日本人は変なところで楽観的で、将来に対しての見通しが甘いところがある」と言います。無為な公共工事や1300兆円を超える国の借金などを例に挙げられれば納得いく部分もあります。

個人的に本書のポイントはいくつかありますが、その一つは「人口」についてでした。

人材に「異能」を求めるということもあり、人や人口についても触れられています。人口の変化表す「人口動態」は未来を予測するのに精度の高い指標であり、世界各地で今後起こる高齢化や人口ボーナス予測を元に、各国の見通しが紹介されています。

地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
「人口動態」についてはドラッカーも、すでに起こった未来を知るための指標として評価をしています。余談ですが「地方消滅 – 東京一極集中が招く人口急減 」で示された統計のポイントは単なる人口推移ではなく、子供を産める若年女性という指標に注目をした点にあり、そうした例のように単に人口の推移を見るだけでなく、今後の未来予測のために何を考えるかによって、データの見方や活かし方も異なるのだと思います。

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるかちなみに「じゃあ今後日本が移民の受け入れを実行したとしたら、人口動態予測も変わってくるのでは?」と思う場合もあるかもしれません。

移民についての指摘は様々あり、移民が国内に流入することで労働賃金の低価格化競争が起こるのではという論もあり、実際に欧米で議論を呼んでいるところでもありますが、タイラー・コーエンの「大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか」に書かれている移民受け入れの影響については、必ずしも上のような事象につながるとは言えないという指摘もあります。

しかし今後のグローバル化による世界的なより一層のつながり方や、佐藤優の言う「新帝国主義」、国という括りではない企業組織の在り方などを考えると、世界中の人々があらゆる場所で交流したりビジネスをする状況が広がってくることを想定すれば、国内における移民の議論はさして意味がないとも言えるかもしれません。

個人的なポイントの二つ目としてはやはり「教育」です。

前作でも多く触れられていましたが、本書では国際バカロレアの国内適用に関する意義など、世界の変化に合わせて日本の教育システムを変化させていく必要を強く指摘しています。最近の新聞紙面でも「アクティブ・ラーニング」など、これまでの暗記・記憶重視のシステムから、自発的な思考力を養うシステムへの転換が教育現場で図られつつあることを目にするようになりました。国のICT施策によって教育現場へのタブレット普及が謳われるなど、一般の大人には気づかないところで、子供たちの教育現場には様々な変化が今後少しずつ起こっていくのかもしれません。その全てが正しく必要であると言い切ることはなかなか難しいのかもしれませんが、個人的には概ね賛成派です。

ちなみに本書で触れている「教育」の対象は子供たちだけでなく、大人も含まれます。「教育」というキーワードから、本書後半ではこれからのビジネスパーソンに必要な5つの能力に触れながら、著者が学長を務めるBBT(ビジネス・ブレークスルー)が実施するeラーニングシステム「Air Campus」の仕組みや特徴について紹介されています。eラーニングアワードを受賞したシステムについて、関係者のインタビューなど豊富に紹介されています。

上で触れてきた本書の要旨を自分なりにまとめると以下のようになりました。

「今後起こるグローバルな変化に対し、現在の日本のシステムではビジネス・教育・政治などあらゆる点で対応できない。そのためにまずは世界各地の現状を把握し、それに対応していくために今の日本に何が欠けているかを知ることが重要であり、その根本的な問題として教育を改革し『異能』な人材を生み出していくことがポイントとなる。その『異能』な人材を生み出す手段の一つとしてeラーニングという手法がある」

教育については以前から個人的に関心が高いこともあり、教育の重要性については強く賛成です。教育を良くしていくための方法については色々な議論があると思いますが、本書で紹介されているeラーニングは特に参考にしたいと思います。

ちなみに今回も電子書籍版を専用アプリで読むという方法でした。ネットに接続していないと読めないというのは、心理的に少し抵抗がありますね。実際には家でほぼ読んだので問題なかったといえばなかったのですが、普通の本や他の電子書籍のように気軽に外に持ち出して読めるようになればもっと良いなと、やはり今回も感じました。とはいえ貴重な書籍を無償で読ませて頂き、ありがとうございました。

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