【レビュー】グーグルのグリーン戦略

グーグルのグリーン戦略=グリーン・ニューディールからスマートグリッドまで=
レビュープラスさんから戴いた「グーグルのグリーン戦略」についてのレビューです。

仕事柄Webに関わる身としては、今まで「グーグル」に関連した本を読んだことはたくさんありました。が、同じグーグルでもこの類の内容のものは初めてでした。なんか新鮮。

本書は書名の通り、グーグルのグリーン戦略、つまりエコについてグーグルがどのような取り組みをしているかを記している内容となっています。

グーグルのエコについて自分が予備知識として持っていたのは唯一「スマートグリッド」でした。よくグーグルの中の方がセミナーなどでスマートグリッドについて話したというニュースをネットで見ていたからなのですが、しかし本書を読んでみてより深く知ることができたというか、あっ結構違う感じで理解していたかもなという部分があったことに気付かされました。

それまで自分が持っていたスマートグリッドのイメージは、「電力の送信について抵抗を極限まで減らすことにより、地球の裏側で生成した電力を効率的かつ安価に自国へ供給できる」というようなものでした。Webの世界を席巻する王者グーグルといえども、そのシステムを維持するため膨大な数のサーバ運用が必要、つまりそれらに供給する電力コストも莫大なものになるため、そういったインフラ部分のコストを抑えるための戦略こそがスマートグリッドであり、グーグルが力を入れている理由だと思っていました。

しかし本書では終盤の第8章でスマートグリッドについて詳しく触れられており、それによればスマートグリッドとは国によって定義が微妙に異なるものの、「ITを活用した次世代の電力網の形態であり、電力に加えて情報が双方向に流れることで、電力関連の新しい機能やアプリケーションを利用できるようにすること」と述べられています。つまり「IT」を活用した電力のあり方ということになります。自分が持っていた既存のイメージは広義の意味では間違っていなかったかもしれませんが、実際のところはより広い意味合いが含まれていたようです。

第8章では日米欧各国のスマートグリッドに関する取り組みが紹介されています。日本でもすでに経済産業省主導によるプロジェクトチームが発足していたり、民間の電力会社による新しいタイプの電力計量システムやメーターの実施、それに関する助成金のことなどについて触れられています。

この「電力会社による各取り組み」が最近非常に興味を持ってみているところです。というのもそれまで電力会社やガス・水道といったインフラ系会社の個人的なイメージは単に「電気・ガス・水道を作って家庭や会社に供給している」くらいのイメージしかありませんでした(中の人見ていたらすいません)。

週刊 ダイヤモンド 2010年 4/3号 [雑誌]しかし、こういったスマートグリッドに関する取り組みの他にも、先日読んだ「週刊 ダイヤモンド 2010年 4/3号」「無縁社会」特集では、東京ガスがガスの利用状況を通して一人暮らしのお年寄りの生活状況をチェックするサービスが紹介されていたりなどしました。これこそまさにインフラを司る会社としての社会的役割を、事業内容を生かして行われている例だなと感心していました。

このように、事業とは別の手間をかけて社会貢献などをするCSR(企業の社会的責任)とは違う、事業を通して直接的に社会貢献へつなげる「戦略的CSR」が昨今注目されているそうです。

実際本書を読む限り、グーグルはCSRと戦略的CSRを両方行っている感じがしています。本業のWeb事業とは別にIT関連の企業と非営利団体を設けてエコに関する取り組みを行ったりなどする一方、Webでは無料で自宅の電力消費量をチェックできるガジェットなどを開発・公開することで、ユーザーに電力消費に関する啓蒙を行ったりしています。

面白いなと思ったのは、「車でお店にモノを買いに行くより、グーグルでネットショップを検索してWebで注文した方がガソリン代や二酸化炭素の発生を抑えられますよ」といった説明や、グーグルで検索する際のエネルギーをオレンジジュース一杯のエネルギー消費量と比べてみたら検索回数何回分になるなどの例で、なるほど何気なく検索している自分の行動一つとってみても、エネルギーに関わっているんだなという気がしました。グーグルと言えば検索なのでこういった例は面白いですね。

今回のレビューはあまり本書内の内容に触れずにとりあえず感じたことを中心に書いてみましたが、本書ではグーグルのエコに関する取組について多く掲載されています。本書の核であろう「グーグルのグリーンエネルギーについての5つの提案と取組み」については以下の通りで、それに派生する多くの記述も見られます。

  1. RE<C = 石炭よりも低コストな再生可能エネルギーへの取り組み
  2. RechargeIT = 電気自動車の充電方法(チャージング)の最適化への取り組み
  3. Google PowerMeter= 自宅の電力使用量を無料で監視できるツール
  4. 「クリーンエネルギー2030」= 石炭や石油による発電から脱却する提案
  5. 太陽光パネルの設置 = 再生可能エネルギーでCO2排出を削減

最近色々なことに興味を持って様々な分野の本を読むようにしていますが、エコについての本は初めてだったかもしれません。しかし日頃お世話になっているグーグルのエコに関する取り組みということで、予備知識は少なかったもののその分新鮮に読めた気がします。第3章辺りについては少し難解でなかなか読み進めることができなかったりとか、全般にグーグルのCSRについてのPR的な内容とも取れなくもない部分もあるかもしれませんが、カーボンフットプリントなどといったエコについてのキーワードや、データセンターの電力消費減の取り組みなど身近に感じる話題も多かったので、面白く読めた感じがします。最初にも述べましたが仕事上WebやITに関わるものとして、同じ業界にある巨人グーグルのエコについての取り組みや現状を読めてとても勉強になった気がします。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。