「大切な人のためにできること がんと闘った家族の物語」

大切なひとのためにできること がんと闘った家族の物語レビュープラスさんから「大切なひとのためにできること がんと闘った家族の物語」を送っていただきました。

おそらくこういう形で出会わなければ読むことのなかった本だと思いますが、読めて良かったと思っています。タイトルからも分かるとおり、決して明るく楽しい本ではありません。個人的にこういう内容のものは極力避けてきたというか、テレビドラマや悲しいストーリーだと分かっている映画なども見たくない性格なので正直この本を読むかどうか迷ったのですが、ここ最近色々なジャンルの本に興味を持って読んでみたいと思うようになったこともあり、読ませていただきました。

本書は映画「おくりびと」の宣伝担当者が実際に経験した、最愛の父と家族の闘病記です。

闘病記について書かれている本をじっくり読んだのはこれが初めてかもしれませんが、自分にも家族にも将来起こりうることであり、先にそれを擬似的に体験させてもらったような気がします。それまで元気だった家族ががんの宣告を受け、懸命に病魔と闘いながらも虚しく体は衰えていく描写はいたたまれないもので、筆者が数限りない涙と苦悩を経験した様子が随所に見られます。

上で疑似体験させてもらったと言いましたが、厳密に言えば少し違います。というのも私も祖父を肺がんで亡くしているからです。

その頃私はまだ小学校の低~中学年で、祖父が亡くなるまでがんということも知らなければそこまで重症ということも知らされていなかったこともあり、祖父の容態をそれまで特別に深刻なものだとは思っていなかったと思います。おそらく家族の配慮もあったのかもしれませんが、私が初めて泊りがけで祖父の見舞いに行った朝に亡くなったことは覚えています。

あの時とは違い、将来私が筆者のように当事者を支える立場になった際には、想像を絶する苦悩や苦しみが待っているのだと思います。おそらくその時には冷静さの欠片もなく絶望するのかもしれませんが、そんな苦境にあっても最後まで当人のために出来る限りのことをし尽くした筆者の、本書で語られている事細かな記録は少なからずがんと向き合う家族の参考書になるのではと思っています。

本書は闘病記だけではなく、筆者が父のために調べたがんに関する情報が数多く紹介されています。本書の中でも、いかにがんや周辺に関する情報を集めることが重要かが述べられており、がん患者を持った家族の記録とその時のための参考書として手元に置いておきたくなる一冊だと思います。

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