オープンソース化とコ・クリエーションとの関係

MAKERS―21世紀の産業革命が始まるMAKERS―21世紀の産業革命が始まる」を少しずつ読んでいますが、読み進めるに連れて面白さが増してきているような気がします。何故かといえば自分の興味軸に近い話題があるからですが、ここでメモをするのはハードのオープンソース化とコ・クリエーションとの関係です。

3Dプリンター普及の兆しが見られるアメリカにおいて、Webを介したコミュニティによって様々なハード製品が作られる試みが増えてきています。MAKERで紹介されているローカルモーターズは、コミュティによる様々なバックグラウンドを持ったユーザーたちのアイデアや意見によって車をゼロから組み立てています。ローカルモーターズはクラウドソーシング(不特定多数の人間により共同で進められるプロジェクト)形式によって車を欲しいと思っているユーザーと車を作りたいと思っているユーザーの2タイプを、ハードのオープンソース化によってある意味において束ね、その集合知と個々の自発的労力においてユーザーたちが求める車を形にしています。

オープンソースにはある意味においてリスクもあります。その一つは模造品の可能性であり、本書でも実際にローカルモーターズのデザインが、中国製のクローン商品として出たという例が紹介されています。しかしローカルモーターズがこれに対して出した対策は「なにもしない」でした。逆に模倣されたことによるメリット(製品の中国語訳が作られた、クローンされたこと自体ニーズがあるという現れ、競争の健全さ、将来的なイノベーションの可能性)を上げ、更には模造品に関わったユーザーに接触し、コミュニティ(とそれの帰結点である自社製品)に関する活動に引き入れることで、結果的にプラスの成果をあげることができたとしています。

オープンソース化とコ・クリエーションとの関係

自発的なコミュニティとの関わりを持ちながらオープンソースのメリットを活用することは、ひいてはコ・クリエーション(顧客の参画によって創り出される“経験”をもって商品・サービスの差別化を行う戦略 byビジネス用語辞典)につながります。

「オープンハードウェア」の状態では、コミュニティの中で信じられないほど高度な知識や技術を持ったユーザーが集まる場合もあり、また様々なユーザーが集まっている時点ですでにグローバルに展開しているという強みを発揮する場合があります。オープンソース化によって何かを無料で提供すれば、それ以上のものがフィードバックされるという利点を最大限に活かすというのがポイントのようです。

そしてコミュニティとオープンソースを掛け合わせて運用することはマーケティングも兼ねています。何故ならコミュニティの中で生まれるデザインはすでに「顧客が求めているもの」が生まれるからで、生み出された時点でニッチであるあるにせよすでにニーズを満たした製品が出来上がるわけです。その他の過程においても常にコミュニティ=顧客の目線を持って共同で創り上げられているため、いわばマーケティングをしながら製造を行えるという利点があります。

本書ではほかにも自動車業を例に上とは違ったタイプの新しい潮流も紹介されています。それは今後の働き方や変化、淘汰にも関わる部分のようで、この辺りは「ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図」と合わせて読みたいと思っています。

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