ビジネス系や自己啓発系の本がマイブームだった時期は少し通り過ぎたというか、ドラッカー本に出会ってからは「もうドラッカーだけでいいじゃない」と思ったりしていたのでこれ系の本にはしばらく触手が動いていなかったのですが、本書は想定外に得るものが多かったです。
元々仕事で企画をする機会もあるのですが、企画系の本は何冊か持っていたのでしばらくはいいかなとも思っていました。が、本書は企画書の書き方ではなく、今必要かつ有効と思われる企画の在り方や考え方について紹介しています。「空気読み」という言葉が現すように、ユーザーの潜在的なニーズを感じ取り読みとり整理していき、対クライアント(BtoB)や対クライアント+ユーザー(BtoBtoC)へ有効に訴求するよう独自のフレームワークに当てはめながら企画へつなげていく一連の流れが特徴です。
本書は全体的に平易な文章で書かれていますし、流れも自然で非常に読みやすかったです。多分1時間ちょっとくらいで読めたと思います(これが早いかどうかは分かりませんが、自分としては熟読モードで1時間は結構速いペースです)。また、目次を追うだけでは載っていない有益な情報も随所にあったりしてちょっと儲け気分もあったりです。
特にうなづけたのは「年齢ではなく世代の変化を追うこと」「トレンドの振り子の動きに注意」の部分です。これについて詳しくは本書を読んでいただければと思います。
企画の流れ部分ではフレームワークを使用して仮想の企画を立てていくのですが、このフレームワークを使用してからコンセプトを練り上げるまでの思考の流れ(葉・幹・根の3段階で落とし込む部分)はシンプルで分かりやすいながらも、最終的な根までの落とし込みはやや難しい印象でした。これは筆者のスキルの高さなのか、あるいは自分がもっと企画にのめり込んで考えていなかったからかだと思いますが、これについても数をこなすことで経験を積む大切さを感じます。
また、BtoBtoCのフレームワークはクライアントとユーザーという、自分からみると二つの「顧客」が存在することになりますが、こちらもドラッカーの「ほとんどの事業が少なくとも二種類の顧客を持つ」という主張に当てはまり妙に納得しました。片方の顧客だけにメリットがあるだけではダメで、二つの顧客双方、そして自分自身にもメリットが出るような企画を考えることが大切だと触れられています。
とはいえ、企画部分のペルソナで触れられた「いい企画であっても集客。つまりねらっているユーザーにメッセージを届ける方法がなければ誰にも知られないままです」という部分には大いに納得です。それはつまり一つの観点からは有効でも、多面的な観点から見れば不足の点もあるということだと思います。
上記の場合はユーザーに情報を届けるまでの導線、マーケティングミックスの4P(価格・商品・流通・広報)からすればこの場合「商品」に問題がなくても「流通」に課題があると考えられるように、常に多面的な要素で考えることもまた大切だと感じました。
以上のような感じで久しぶりの企画本でしたが、とても楽しく有意義に読ませていただきました。