特別支援学級・学校については全く知識がなかったので、ひとまず現状を広くさらえる本を探していて本書にたどり着きました。初版は2010年4月10日なので、この時点ではかなり現状に近い状態を知ることができると思います。
著者は中学校や教育委員会、盲学校や養護学校長などを経た経験から今どのくらい特別支援学校が増えていて、その影響が特別支援学校だけでなく、通常の小中高学校にも及んでいることを危惧しています。この急激な増加について著者が主な活動拠点としている神奈川県では「過大規模化」と名付け問題としています。
私がそもそも疑問を持った「なぜ特別支援学校の児童や生徒が増えているのか」については(後で気付くのですが、特別支援学校と支援学級ではその名の通り違います)以下のような例が挙げられています。
しかし著者の意見は上記のものとは少し違い、以下のような意見を述べられています。
本書でたびたび出てくるキーワードが「教育的ニーズ」です。本書で取り上げられる事例の中には、知的・身体的に問題がない子供でも落ち着きがないなどの理由で特別支援学級に在籍するケースや、学力的に問題ないものの、自閉症を理由に学校側の判断で特別支援学校に追いやられようとする生徒のケースなどが取り上げられています。逆に、障害はなくてもその生徒に合った環境を選んだ結果、特別支援学校に入ってより良い学校生活を送る生徒の例もありました。
教育的ニーズについては一概に「障害があるから特別支援学校に行かなければならない」というものではなく、障害の有るなしに関わらずその生徒自身をきちんと見つめ、どういった環境や教育がその子に本当に必要なのか、その見極めと適切なナビゲーションが必要だということがいえると思います。
この問題については複合的な要因が絡む部分が多く、著者の主張だけを見て理解しようとするのは難しいのかもしれません(実際、著者の活動や意見に批判が集まっていることも自ら書かれています)。しかし、今学校でどういう事態が起こっていて、どういった対策が取られているのか。それを見て自分が当事者だった際にどういった基準でものを考えるべきなのかのヒントが書かれているのではと思います。