レビュープラスさんから頂いた「1億人のための統計解析」を読みました。
帯には「さよならデータサイエンティスト!」。データサイエンティストといえば「21世紀で最もセクシーな職業」との呼び声高い職種です。インターネットを利用できるスマートフォンやタブレットなどの端末が普及するにつれて蓄積される膨大なデータ「ビッグデータ」を解析することで、企業活動などの改善に活かすことができるとして注目されていますが、著者はこの職種について必要ないとばかりのコピーを謳っています。
もっともデータサイエンティストについてはビッグデータの潮流も相まって確かに注目されている職種であり、人材不足の懸念とそもそもデータサイエンティストを専門に育成する教育機関が日本にはほとんどないということもあって、自社での育成に取り組む例も見られるなど将来有望株の職種にも見られます。
一方で、データ解析についてはフレームワーク化やシステム化も予想され、そもそも人に依存したものとして残るのか、システム化によってコモディティ化するのかという部分にも注目が集まっているように思います。そのため帯に書かれたこのコピーについては腑に落ちるような印象があります。
ちなみに著者は「統計学が最強の学問である
エッセンスが平易に書かれていると上で述べたように、大まかには解析の要となる3つのポイント
これを軸にフレームワークに当てはめて様々な解析に応用できるというのが主題です。統計学やデータ解析というとどこから手をつけたり考えたりすればよいかという取っ掛かりの部分が初心者には敷居の高いところですが、こうして必要な項目とそれを扱う枠を提示することで、タイトルの通り1億人=つまり誰もが解析の手法を実践できるという部分に魅力を感じます。
もう一つ平易な部分として、解析の専用システム等ではなくExcelという世間で広く使用されているツールを例にサンプル課題に当たれる項目もあります。もっともExcelとデータ解析については多くの書籍で同様の例があるので珍しいというわけではありませんが、逆に言えばそれだけExcelの関数などがある程度実用に耐えうるツールとして使用できるということかもしれません。実際に新しいバージョンのExcelに装備されている機能などについても紹介がありますし、意外に基本的な使用法についても知らなかったりすることがあるので、いずれにしてもExcelを例にした内容は嬉しいです。
一方で、データ解析の際に陥りがちな盲点や注意すべきことについても随所に記載があり親切です。定量的なデータは説得力が出しやすい反面、間違った数値を出してしまってもそれを盲信してしまうという可能性もあります。似たような例としてユーザーモデルを作成するためのペルソナという手法がありますが、あれも誤ったペルソナを作成することで、想定顧客と全くマッチしないマーケティングを行ってしまうという可能性もあるわけで、データ解析についても色々注意するべきことが多いと感じました。
上でも述べたように本書にはExcelを使用した解析のケーススタディも豊富なので、まずは本書とExcelを並べながら実際にやってみて、データ解析に必要な工程や思考の流れを体験していくことが有益な勉強になると思います。まずは真似から、型からですね。