着地型観光・LCC・ジオメディアが地方に力を与える 2
前回同じタイトルで書いた「着地型観光・LCC・ジオメディアが地方に力を与える 1」の続きとなります。今回はLCC(ローコストキャリア)、いわゆる格安航空会社についてです。
タイムリーにも先日、ANAがLCC参入を発表しました。以下ニュースから引用です。
目次
全日空、格安航空に参入 アジア開拓へ香港投資会社と組む
全日本空輸は9日、香港の投資会社と共同で格安航空会社(LCC)を設立すると正式発表した。関西国際空港を拠点に2011年度下期から 国際線、国内線の両方の運航を始める計画で、運賃は大手航空の半額の水準を目指す。海外の格安航空が日本へ相次いで進出しており、同業態で対抗する。急拡 大するアジアの旅客需要の争奪戦が、いよいよ日本でも幕を開ける。
初年度は小型航空機を5機程度、リースなどで用意する。国際、国内それぞれ3~4路線を運航する。国際線は全日空が就航していない中国や韓国の大都市、国内は観光客が見込める新千歳、沖縄などが対象になりそう。5年後には航空機を15~20機に増やす予定だ。
12月末をメドに設立する新会社は資本金100億~150億円。全日空は40%未満を出資し筆頭株主となる。香港の著名投資家ビクター・ チュウ氏が率いるファースト・イースタン・インベストメント・グループが33.3%未満を出資、第2位株主になる。残りは金融や旅行、ホテルなど国内の幅広い業種から出資を募る。(日本経済新聞)
LCCの概要としては以下のようなものが挙げられます。
- LCC=ローコストキャリア。いわゆる格安の運賃で搭乗できる航空会社。別名「空飛ぶバス」
- 大手航空会社とは根本的に異なるビジネスモデルで低価格を実現。例として以下のようなもの
- 単一の航空機を使用することで訓練費・整備費を抑える
- 中・短距離で数を多く飛ばす。稼働率重視
- 機内サービスを省略してコストを抑える。飲み物・食事等は有料化し、乗務員の服装も簡易に
- ネットでの直販や自社開発システムによる柔軟な値付け
- 着陸料の安い第2空港や地方路線を活用
LCCについて国内で大きく話題になるのは今回が初めてかもしれませんが、実は国内の航空会社ではスカイマークがすでに低価格プランを提供していたりします。代表的なのは「スカイバーゲン」というプランで、例えば搭乗日の28日前までにチケットを予約・購入すると、片道5800円という格安料金になるといったものです(期間・料金は流動的)。
ちょっとした長距離高速バス並みの低価格ですが、スカイマークの西久保社長が将来的なターゲットとして挙げているのが、まさに深夜長距離バスの利用者だそうです。
新幹線のインパクトが皆無になる可能性
この記事を書いている段階では、地元青森県が今年12月に迎える新幹線の全線開業に向けて話題の多い時期となっています。しかし、このLCCが日本国内で本格的に普及して来た場合(というよりほぼ確実に広がってくると考えていますが)、新幹線はLCCの日陰となってしまう可能性が高いかなと個人的に考えています。高速バス並みの低料金と運行時間の短さを比較すれば、LCCの優位性は圧倒的です。
もちろんLCCにも課題がないわけではなく、低料金がゆえに心配される安全性や信頼性については時間がかかるとも思います。
地方への適合性と課題
LCCが地方路線へ導入されることについては、それが適していると考えられる面と課題の面の両方が考えられます。
LCCが地方路線に適している理由の一つは着陸料の安さです。世界一高いと言われる日本への航空機着陸料ですが、地方路線のそれは必ずしも高いものではありません。中国の春秋航空が茨城空港と結んだ往復4000円のキャンペーンも、その着陸料の安さが要因の一つでもあります。
課題としては、LCCの特性として機体の稼働率向上が鍵となります。地方路線に飛ばしたとして、稼働率が上がらなければ採算はとれません。地方路線では24時間運用や中・短距離国際線の就航に対応していない空港も多いため、稼働率の面において不安が残ります。ANAがLCCを運用するのに該当すると思われる国内の空港が関西国際空港と中部国際空港の2つしかないとも言われる所以です。また国際線を有することについては、LCCが進んでいる欧米やアジアにおいてこれまではなかった長距離国際線への適応が検討されていることも背景にあります。
ともあれ欧米・アジアではLCCの形態をとる航空会社が増加していくなか、ANAとしては新たな市場開拓と顧客の流出防止をかけて参入せざるを得ない時期に達したのだという見方が大勢のようです。
地方にいる身としても、今後広がってくると思われるLCCについての知識と展望を持っておくことが重要と考えています。
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