日経ビジネス 2010.11.8

市前です。タイトルの雑誌のレビューです
nikkeiB1108

日経ビジネス 2010.11.8 p.56-57
隠れた世界企業
向山蘭園(山梨県甲州市、洋ランの苗の生産・販売)
ランの苗作り、世界で開花

―香りが良く華やかで、祝い事やお歳暮などで欠かせないお花―
ランは「カトレア」「シンビジューム」「デンドロビューム」「デンファレ」など様々な種類があり、生育環境や水やりの量なども品種によってまちまちです。人工交配によって新しい品種を作り出せるという特徴から、洋ランは世界各国の愛好家を虜にしてきました。

その苗の年間生産量で世界トップ10に入る企業が日本にあるというので驚きました。2010年6月期の連結で8億1000万円を売り上げた、山梨県甲州市にある向山蘭園(むこやまらんえん)です。1960年代から洋ランの組織培養技術に注目し、研究者に問い合わせたり、英語の論文を読んだりしながら研究を重ね、73年に自前の設備でクローン苗の生産に成功します。

近年は中国の子会社でも生産を開始し、売上高の4割が海外です。リーマンショックによる消費不況と、超がつく円高により同社の向山武彦社長は

「創業から45年で今が一番苦しい。円高も企業努力で何とかできる範囲を超えている」

と話しています。こういう局面では、しっかりした企業理念があるか、何のための事業なのかが明確か、ということがとても大切なのだと思います。向山社長は23歳で独立後、マニアだけでなく広く受け入れられる品種を開発して、その苗を大量に作って各地の生産者に安く売るという方針を固めます。生産量を追わなくて良いことから1株200万円を超えるような高級品を丹念に育てる個人事業主が多いのに対し、向山社長は地元に雇用をもたらし、全国に苗を届けられる体制を目指しました。

その体制構築に必要な要素が3つあり

  • 単価が低くても利益を生み出すために必要な大量生産の仕組み
  • 高級品種以外のラインアップを充実させるための品種作り
  • これからの開発に必要な投資を継続すること

3つ目の開発に関しては、景気動向にかかわらず年間5000万円をつぎ込んできました。毎年2万種の新種作りに取りかかり、耐病性や成長速度など約30の項目でふるいにかけると出荷できるのは10品種だそうです。とても気の遠くなるような話です。

現在は国内の洋ラン愛好家に若いファンを増やす狙いで、単価が2,000円台の「クリスタルオーキッド」を来年5月から関東で正式に販売します。胡蝶蘭、彗星蘭とミルトニア(ラン科の品種)を特性の保水剤に差し込んだ鉢植えです。土が不要で鉢が軽く、水やりは月1回でよいためお土産や見舞い品の需要が期待されています。「ラン作りを商業化したい」という向山社長の思いが、向山蘭園と国内の生産者たちを明るい方向へと導きそうです。「クリスタルオーキッド」見た目はとても可憐ですが、管理が簡単なのでずぼらな私でも大丈夫そうです。来春お花屋さんをのぞくのが楽しみです。

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