大学講義のネット公開と学生集めの戦略

少子化の影響からか大学がつぶれたりすることも聞かれるようになった昨今、各大学ともあの手この手で学生集めに奔走しています。大学の学生集めとして有効なメディアといえば年代・行動属性などから考えるにウェブはかなり有効な手段と考えられます。それを如実に表すかのように最近よく聞くのが、大学で行われている講義のネット配信です。

大学講義のネット配信としてキーになっているのがポッドキャスト(Wikipedia参照)です。音声や動画コンテンツをパソコンにダウンロードして視聴できるだけでなく、ipodなどの携帯メディアプレイヤーにダウンロードして外でも視聴を可能にするのがポッドキャストですが、大学でこのポッドキャストをよく活用していると思われるのが東京大学です。東京大学教員の講義資料を無償で公開するWebサイトとしてUTオープンコースウェアというサイトが公開されており、その中にポッドキャストのページも用意されていて、それを利用すればiTunesなどのソフトで簡単に東大の大学講義を無料視聴することができます。つい最近ではあの坂本龍一の講義もポッドキャストとして配信されることになったそうです。

こうした動きはますます活発になっているようで、国内6大学が講義のネット公開を目的とした組織を作るところまで進んでいるようです。といってもこの組織はすでに2005年に始まっているそうですが。

MITにならえ──国内6大学が講義をネット公開
東大、京大、慶応大など国内6大学が講義情報のネット公開を始めた。学外での学習や研究に役立てててもらい、教育の質向上につなげる。ただ、情報の充実や著作権問題などクリアすべき課題は多い。

東京、東京工業、京都、大阪、早稲田、慶應義塾の6大学は、講義情報のネット公開を進める組織「日本OCW連絡会」を設立し、このほどWebサイトを開設。情報公開を始めた。講義のシラバスや資料などを無償公開し、大学外への情報発信や大学教育の質の向上につなげる。

こうした動きの中には記事中にもあるように、著作権や各大学の方針の違いなどで配信する講義の量などについても違いがあるようです。また、2005年頃はポッドキャストの知名度もまだ低かったように思いますし(今でも決して高いとは言えない気もしますが)、ネット配信といってもまた違った方法がとられていたのかもしれませんね。

2008年今のところ、大学講義のネット配信についてはおおむね肯定的な意見が多いようです。gooリサーチの調査結果によれば、アンケート回答者のおよそ9割は講義のネット配信に肯定的で、講義を公開している大学の認知度も上昇傾向だそうです。

大学講義のWeb公開「受講したい」8割 gooリサーチ・慶応
今回の調査結果より、前回平成18年12月の調査よりも大学の講義内容のWeb公開は高く評価されていることがわかった。実際に利用したいと考える人は 8割を超え、「経済学」「情報科学」など実用的な講義を主とした講義数の充実や講義内容の分かりやすさなどを望む声も高いことが伺える。

現在、Web公開をしているのは15大学。こういった取り組みについての認知度は、「一部の大学について知っていた」の回答が前回より4ポイント増加して21.5%。「全ての大学について知っていた(0.6%)」と合わせると、認知度は22.1%と上昇傾向にあることが明らかとなった。

上記の調査結果についてのポイントは以下のとおりです。

  1. 大学の講義内容公開について、90%以上が肯定的な評価
  2. 講義内容を公開している大学の認知度は上昇傾向
  3. 大学の講義内容を見られるWebサイトを利用したいと回答した人は全体の8割以上
  4. インターネットで見たい講義は「経済学」「情報科学」など実用的な講義が人気
  5. インターネットで講義を見る際に重視する点は、「講義の分かりやすさ」がトップ

タイトルと冒頭で述べた結論は上記のポイント2と3に落とし込まれているわけです。もっとも今回は学生集めとネット配信を絡めたネタだったわけですが、学生集めだけではなくて企業や地域に対してもより訴求力のある大学のネット戦略というのもまだまだ出てくると思います。ポッドキャストに関しても個人の趣味的インターネットラジオな使い方からビジネス用途まで、幅広い使い方が考えられますしね。

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