【レビュー】週刊 ダイヤモンド2010年4月3号「無縁社会」

週刊 ダイヤモンド 2010年 4/3号 [雑誌]どちらかというとビジネス系の特集に触手が反応する最近だったので、「無縁社会」というこの特集には最初あまり興味がわきませんでした。が、立ち読みして読み進めるうちに少しずつですが「共感」と「怖さ」を感じたので、買って読んでみることにしたのが週刊 ダイヤモンド 2010年4月3号です。

目玉の特集は「無縁社会」。特集の最初はこんな文章で始まります。

かつての日本社会には、血縁、地縁、社縁といった個人間の相互扶助システムが機能していた。しかし今、それらの縁をことごとく失って孤立し、一人で死んでいく「無縁死」が急増しているという。1月末に放送されたNHKスペシャル「無縁社会」では、年間に3万2000人が無縁死しているという衝撃的事実を提示、大きな話題を呼んだ。同番組が投げかけた問題提起に応えるかたちで、「無縁化」の実体を追い、解決策を模索していこう。

最初は、それまで普通に働いていた男性が体調不良を崩したことをきっかけに解雇、借金、自殺へと転落していく事例から。自殺をしようと思っていた人が思いとどまるきっかけとしてよく挙げられるのは、知人や友人に「話すこと」だそうです。話すことで解決するわけではないけれど、悩みや苦悩を口に出して人に聞いてもらうことで気持ちが和らぎ、思いとどまるということが往々にしてよくあるそうです。が、話を聞いてくれる人がいなかったら、つまり「無縁」であったら・・・。

特集で「無縁社会」と名付けられたこの状況はすでに始まっており、年間3万2000件もの「無縁死」が起こっているそうです。無縁死とは身元不明の自殺であるとか、行き倒れなどがこれに当てはまるそうです。

「無縁死」の原因として

  • 核家族化
  • 他人との関係の希薄化・晩婚化・非婚化による独身者の増加・子供を持たない選択などライフスタイルの変化
  • 都会に出稼ぎに出た地方出身者が、故郷の過疎化や荒廃で帰る家を失う

などが挙げられています。個人的には「故郷の過疎化・荒廃」がすごく身近に感じます。というのも私の地元は岡山の片田舎なんですが、帰省するたびに集落に住んでいる人の数が減っている感じがして、近い将来には誰もいなくなっているんではないかとよく思っていました。しかし、この無縁は必ずしも田舎で起こっているというわけではないようです。

東京都港区など「お金持ち」なイメージのエリア(私は東京に疎いので分からないんですがそう書いてあります)だそうですが、ここでも一人暮らしの高齢者は増えているそうです。内閣府の高齢者意識調査でも「4割超「孤独死は身近」と感じる」という結果が出ています。また、高齢だけでなく収入面でも不安を抱えている部分があり、8割以上は生活保護以下の収入で暮らしているそうです。

超高齢社会における新介護経営―善光会「理念」×「仕組み」×「やりぬく力」の経営高齢者の低収入は問題が多く、「超高齢社会における新介護経営」では、特別養護老人ホームの入居待機者が42万人に達すると書かれています。介護業界の事情は複雑で、民間の参入が部分的に解放されているものの、民間が参入できる有料老人ホームなどは特別養護老人ホームとは異なり、公の負担を受けられないことから利用料金が高い場合などがあるそうです。こちらの「超高齢社会における新介護経営」もいつかレビューで取り上げてみたいと思います。

多くの問題をはらむ無縁社会化ですが、これに呼応して様々な取り組みやビジネスも動き出しているようです。地域に住むお年寄りを孤立させないコミュニティの構築(千葉県松戸市常盤平団地のNPO「孤独死ゼロ研究会」)や、複数人で共同利用するシェア住宅、日雇い労働者の大きな問題である住所の保証から様々なサポートを行う大阪西成の生活支援型マンションサービスなどなど、多くの活動が紹介されています。

無縁社会は誰しもが当事者になる可能性があります。自分が今回の特集号を立ち読みだけでなく買って読んだのも、とても他人事ではないという気持ちになったことが大きいです。今の自分は家族も子供もいて暮らしていますが、田舎では祖母が一人寂しく暮らしている現実があります。とても身近な問題ですが、簡単に解決ができない問題でもあると思っています。

NHKで特集に関わられた方のインタビューも掲載されているのですが、無縁の問題については何も核家族化に戻ろうとか、地方に帰って親戚と共同で生活しようという提示をしているわけではなく、これからどうしたら良いか考えるきっかけにしてほしいとの思いで番組を作られたそうです。

ウェブの業界に関わる自分としては、ウェブの技術がこれを解決できると自信を持って言うことは正直できないんですが、何かしらのことができればと思っています。100を満たさなくても10でもという気持ちです。

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