【レビュー】ケチャップの謎(※発売前書籍)

マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想”レビュープラスさんからいただいたケチャップの謎、正式には「マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想”」というちょっと長いタイトルの本のレビューです。

といっても実はこの本まだ発売されていません。発売前のゲラ刷り、紙の状態で郵送していただきました。発送元もいつものレビュープラスさんではなく、講談社さんからでした。ただし全ページというわけではなく、全6章のうち3章までを戴きました。Amazonではすでに予約が始まっていて表紙も決まっているようです。ちなみに翻訳者は勝間和代さんです。

画像:ゲラ刷り2冊を半分にカットして積み上げてみたちなみに今回はゲラ刷り状態のレビューが本誌を合わせて2冊募集があり、そちらも応募していたので計2冊分のゲラ刷り原稿が届きました。A3サイズで大きかったので半分にカットし、積み上げてみたら結構なボリュームで。

でもこういうゲラ刷り状態で近く書籍になるものが、一般人の自分の手元に郵送してもらえるというのはホントにすごいことだなーと思います。嬉しいですね。

送っていただいたからにはちゃんとレビューをしなければなんですが、このボリュームを持ち歩くのはなかなか厳しいなあと思ってですね。というのも自分、本は家でなくて外で読みたい派なので大体仕事のカバンに入れて持ち歩くんです。が、この厚みと重さは外にもって出るには厳しい。

画像:原稿をiPadにPDFとして取り込んでみたそこでiPadに入れて読むという通称「自炊(電子書籍を買わず、自分でデータを作って取り込み電子書籍として使うこと)」にチャレンジしてみました。あれ、レビューいつ始まるんだ。

実際にiPadに取り込んだ画像もアップしてみました。写真で見る限りは結構小さいですが、iPadは二本指でズームができるので拡大して読むことができました。また、一本指で左右にスライドさせればページめくりもできます。これで持ち運びできる良い感じになりました!

今回の自炊の難点としては、もう少し余白をきちっと裁断すればよかったなということです。写真をよく見ればわかる方は分かると思うんですが、上下と左側に余白が残っています。これもちゃんと裁断すればデフォルトで文字も大きく表示されますし、ページめくりもスムーズにいくはずです。実は二本指で画面を拡大したあとに一本指でページめくりをすると、一本指の操作はドラッグも兼ねているのでページがめくられず画面が少しドラックされるという動作になってしまうので、スムーズなページめくりができませんでした。これはソフトにもよるのかもしれませんが、少しストレスでした。ちなみに使っているのはGood Readerというアプリです。

で、レビューこっから。

全体の流れとしてはビジネス系の翻訳書でよく見かける、ケーススタディのストーリー形式で進んでいきます。タイトルの「ケチャップの謎」は一見ビジネス書のイメージが湧きにくいかもしれませんが、当然本書の内容にも関わりがあります。

本来の目的にフォーカスする

第1章のツボとして、「本来の目的にフォーカスすることの重要さ」があると感じました。第1章はテレビショッピングの有名な実演販売人の話です。彼は類まれなる話術とパフォーマンスで消費者の心理を突き、紹介する商品を飛ぶように売るカリスマとして紹介されていますが、話の中で出てくる以下の言葉が象徴的です。

商品こそが主役であり、バイヤーの才能は商品を主役に仕立て上げることころにある。

もちろん他にもストーリーの転回や期待感の煽り、広告手法からお金の払わせ方など、その筋の人にはかなり興味をそそられるストーリーが展開されていくわけですが、全ては上の言葉、「商品こそが主役」とするためであり、それがバイヤーにとって真の狙い(ビジネス上の目的)である「商品を売ること」に重要な要素となることが示唆されています。

個人的にはテレビショッピングにあまり好印象を持ってみていなかったのですが(テレビショッピングで購買活動をする層の年齢層はなんとなく想像つきそうですが総じて高いそうです)、このストーリーを読むといかにかの番組に登場してプレゼンをしているバイヤーの動きに多くを学ぶ点があるか気付かせてくれると思います。

セオリーの通用しない大衆品から何を学ぶか

第2章は本書のタイトルにもなっているケチャップ業界についてです。

本章に登場してくるのはケチャップだけでなく、マスタードやソースなど、多くの調味料が出てきます。しかしここでケチャップがフォーカスされている理由は、ケチャップの販売戦略が他の調味料におけるセオリーと必ずしも一致しないという不思議な事象からです。それを表すように本章では「仮定」がたびたび登場します。万人受けするダイエットペプシとは?ソースとは?そしてケチャップとは?おそらく誌面では紹介しきれないほど多くの仮定と試行錯誤が試されたのでしょう。故に本章から学ぶべきは「実行と継続」と思います。

マネジメント - 基本と原則  [エッセンシャル版]多くの仮定とともに多くの開発者が多くの試作品を作り、フィードバックを元に更なるブラッシュアップを図っていく様子も書かれていますが、それはつまり仮定で留まらず常に試行錯誤するという「実行」を行いながら、更にそれを「継続」していく中で成功へとつなげることの重要さを説いていると感じます。

これについてはドラッカーも「マネジメント[エッセンシャル版]」で示唆しています。

成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。まちがいや失敗をしない者を信用してはならない。人は優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる。(ドラッカー)

白い白鳥をどれほど多く見たとしても…

第3章は投資についてのお話です。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質投資には個人的に興味が薄いので難しい個所もあったのですが、しかし「ブラック・スワン」という本はビジネス書棚の並びにあって異色を放つ装丁でしたし、ビジネス書レビューでもよく取り上げられているのを見かけていたので、名前と大筋のストーリは知っていました。そう、本章の主人公はこのブラック・スワンの著者ナシーム・ニコラス・タレブです。

主要な登場人物はこのタレブと、タレブが尊敬しつつもその投資方法は真逆のヴィクター・ニーダーホッファーです。投資についての説明も個所箇所で書かれていますが、なにぶん予備知識のない自分には、タレブのビジネスの肝であるオプション取引がなんなのかもよく分からない状態で読み進めましたが、タレブとニーダーホッファーの投資方法が全く異なるものというのは分かりました。世間的にヒーローと呼ばれるタイプはニーダーホッファーの派手な勝ち方。それに対してタレブの投資方法はローリスクな反面、ボディーブローのように日々積み重なる損からくる精神的負荷が象徴的です。

また、この章では行動経済学にも通ずるような興味深い事例も紹介されていました。

いざ「損失」となると賭けても構わないが、「利益」ということとなるとリスクを回避したくなる。

投資はおそらく市場に参加する投資家全てが対象となっての取引だと想像しているのですが、本章ではまるでタレブとニーダーホッファーが市場を二分し異なる戦略で戦い合っているかのような錯覚を受けます。そして文中に登場するブラック・スワンの肝となる言葉がこの構図のまさにキーワードとして紹介されています。

白い白鳥をどれほど多く見たとしても、すべての白鳥が白いという結論は導けない。だが、たった一羽の黒い白鳥(ブラックスワン)を見れば、その結論の誤りを証明するには充分である。

あとは読んでのお楽しみということで。

ということでレビューでしたが、今回のように登場人物の多いストーリーは人物の把握がなかなか難しいですね。丁寧に人物の見た目や性格の特徴についても描写がありますが、絵としてイメージするかメモを取りながらでないとなかなか読みが進みませんでした。この辺は慣れもあるのでしょうかね。しかし今回も学ぶことの多かった本書でした。

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