爆速経営 新生ヤフーの500日【読書レビュー】

爆速経営―新生ヤフーの500日
レビュープラスさんから頂いた「爆速経営―新生ヤフーの500日」を読みました。

ヤフー(Yahoo)でこの時期話題になったことと言えば、運営するネットショッピングサイト「Yahoo!ショッピング」の出店・利用料を全て無料にするというビッグサプライズで界隈を驚かせたのが記憶に新しいところです。

本書はタイトルにあるとおり、CEOをはじめとしたヤフーの経営陣が一新されてから1年余りの軌跡を辿ったストーリーですが、個人的に面白いと感じたポイントが大きく二つあります。それは「異例」と「常道」です。

「異例」とは、経営陣の刷新についてです。ヤフーの外側から見える部分(売上や経常利益)について、ヤフーは16期連続という記録的なプラス成長を続けており、旧経営陣に何かしら問題があっての人事異動ではありません。ビジネスにおける結果を出している状態において、なぜ経営陣という柱をすげ替える必要があったのか。

その理由はある程度成長したどの企業にも生じうる問題ですが、一見して問題がなく順風満帆に見える組織の中に生じていた潜在的な問題を直視し、これから先を見据えて大鉈なたを振るうことができる勇気の陰には、やはり孫正義という大きな存在があったこととが伺い知れますし、組織としてこの人事刷新を許容し実行することができたことに、ヤフーの真の力を感じることができます。

一方の「常道」とは、新たなトップとなった宮坂CEOと新経営陣が行った一連の改革が至極当たり前のことであり、そのコンセプトはいずれもマネジメントの原理原則にある通りのことだからです。

私のブログではたびたび引用するマネジメントの巨人、ピーター・ドラッカーですが、新経営陣が行った施策のいずれもが、ドラッカーがマネジメントの手法として紹介していることに当てはまります。企業の目的とは何か。顧客は誰か(顧客は通常二種類いるという指摘まで一致しています)。原理原則を行うことの重要性など、ドラッカーの一連の著書を読んだことがある方なら、うなづきながら読む部分が多々あると思います。

また、ベンチャー流の企業ステップ手法であるリーンスタートアップ、その他サイバーエージェントやグーグルが行っている組織マネジメント手法やコーチングなど、様々な手法を柔軟に取り入れ、文字通り「爆速」で実行している点も光ります。ことヤフーのように5,000人規模の大組織で素早い意志決定と実行を行うことは容易ではないと思われますが、それを実現することこそ今回の経営陣が目指した要諦で合ったと思います。

上記のほかにも様々な改革を行い、経営陣交代の1年目で久方ぶりの2ケタ成長を実現したヤフーですが、今後の課題として上げているのが「イノベーション」です。スマホやタブレットなどの新デバイス普及の波に乗り遅れ気味の現状から「スマデブファースト」を掲げて新しいサービス、新しい価値を生み出していくことを目標にしていることが見受けられます。

そのイノベーションの一つとして興味深いのが、先に紹介したヤフーショッピングの無料化です。インフラ式収益モデルから広告収入モデルへと、いわゆる「ルールを変える」という新しい試みにはイノベーションの片鱗を感じますが、これが今後どういう形になっていくのか、Webに関わる者としては目が離せない状況です。

これまで紹介してきたように、本書はWeb業界に身を置く人だけでなく、組織内部の現状を憂う企業経営者にも参考になる要素が多分にあります。正直読む前と後の印象はかなり違って、予想以上に「読んで良かった」と思わせられた一冊でした。

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