【レビュー】つぶやき進化論

つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)レビュープラスさんから戴いた、「つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)」のレビューです。

前回おなじくレビューで戴いた「モチベーション3.0」と「ケチャップの謎」は紙のゲラ刷りだったのですが、今回はPDFファイルということですぐにiPadに入れて読むことができました。

ちなみにリーダーのアプリをいくつか試して、どれが一番読みやすいか試してみました。使ったのは「GoodReader」「i文庫HD」「iBooks」の3つですが、個人的にはGoodReaderが良いかなと思いました。多少の画面拡大縮小の手間はありますが、数タップで比較的スムーズにページ移動ができたのはGoodReaderでした。が、他のアプリについて使い方が足りなかったかもしれないのでこの辺りは他の方の意見も聞きたいところです。

今回戴いた「つぶやき進化論」ですが、読み進めていくうちに頻繁かつ本書のキーワードとして出てくるのは「ソーシャルノミクス(みんなの経済)」という言葉。ソーシャルノミクスとは普通の人が主役の経済であり、ソーシャルメディアと呼ばれる各種のWebサービスによってアメリカのオバマ氏が大統領になったことなどを例に話はスタートします。

序盤はソーシャルメディアが検索エンジンよりも優位な点や、架空または実在の人物がソーシャルメディアを活用することにより「こんないいことが!」「こんなすごいことに!」なるケースをこれでもかと紹介していく展開。

正直「こんなにうまく行くかいな」と思ったりもしたのですが、それに呼応する形でさも滑稽な話がこの展開にうまく絡み合ってきます。それは旧メディアのソーシャルメディアに対応し切れていない現状です。

自らチャンスを消していることに気づかない旧メディア

本書ではソーシャルメディアという言葉自体は知っていても、それを無理に操ろうとしたり自己中心的な考えに固執することによって、自らわざわざチャンスを消しているケースがいくつも紹介されています(もちろん好例もたくさん紹介されています)。新聞や映像系、航空会社など業種も様々ですので、自社に当てはまるケースを探してみてもよいかもしれません。

ただ、自らがソーシャルメディアを正しく理解していなければ、この事例に悪例として載っていることもまた理解できず活用されることもないかもしれません。そんな方でも本書を通しで読んでいけば理解も深まるのではないでしょうか。

あらゆる角度から正当性を見せるソーシャルメディアのあり方

上で述べたように、本書の事例には一見するとずいぶん旨い話と感じられるようなものもたくさんあります。しかし著者はあらゆる角度から、自信の述べるソーシャルメディアのあり方について正当性を述べています。そしてそれは私も納得のできるものでした。

例えばある記事を書くのに最もふさわしいのは有名ニュースサイトの記者ではなく、「楽しんで」無報酬で書いているブロガーたちだという記述があります。また、比較的有名な事象についての説明は有名な辞書に書いてあることよりも、多くのユーザーの手で編纂されるWebの百科事典Wikipediaに記述されている内容の方が、情報の精度が高いといえる調査結果などを示しています。

フリー完全活用本 (知的生きかた文庫)これは「ロングテール」のクリス・アンダーソンが日本でその名を知らしめることとなった著書「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」の中で説く4つの無料経済のうちの一つ、「非貨幣市場」にあたります。金銭的な報酬がなくともユーザーにとっては別の価値を見出すことにより、コンテンツの醸造に寄与してくれるという例です。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すかまた先日読んだ、自発的動機付けの重要性を説く「モチベーション3.0」でも、それを喚起する要素の一つとして自立性を説いています。先日のレビューでも書きましたが、ROWE(ローウ)と呼ばれる、出勤時間も就労場所も自由な職場環境を構築して従業員のモチベーションを高めることで生産性を上げた例なども、ソーシャルメディアに大切な要素を示唆していると思います。

ソーシャルメディアへの扱いは都合がよい?

上記で述べてきたように、本書のソーシャルメディアについての記述には色々思うところがありながらも概ね賛同しています。しかし、なかなか難しいところがあったのも事実です。例えば以下の部分について。

顧客の不満に答えようとする考えは確かに目新しいものではない。だが、Twitterなどソーシャルメディアを使って顧客をケアしようとするとき違うのは、スピードと手間の軽さ、そして影響の及ぶ範囲の広大さである。

これは本を書いた著者が、読者となってくれそうなユーザーへの対応をソーシャルメディアで行っているという場面です。

ちょっと本書を離れて現実の世界に目を向けてみると、最近の書店ではtwitter関連の書籍が棚に溢れていますし、テレビ番組やニュースでもよく見かけるようになりました。なかには(というか大半かもしれませんが)ビジネスを目的にtwitterを活用する動きもあるため、どの書籍やニュースも(もちろん本書も)twitterの良い点について特に重点的に紹介しており、逆の面にはあまり触れられることがありません。というよりはむしろ「都合のよい解釈」が散見される場合があるということです。

上の記述部分でいうと、わずか一人の読者候補をソーシャルメディア上でケアすることにより、芋づる式でその良い影響が瞬く間に拡大していくというイメージになっていると思います。

週刊 ダイヤモンド 2010年 7/17号 [雑誌]しかし、週刊ダイヤモンド2010年7月17日号の特集「ツイッターマーケティング入門」では、twitterが他のソーシャルメディア系サービスと比較して炎上(悪い噂などが広がっていく様)しにくいという例が挙げられています。

ツイッターは比較的、炎上が起こりにくいといわれている。その大きな理由の一つは、「基本的に、発言はフォロワーにしか伝わらない」という構造にある。

上の記述は、ソーシャルメディアが持つ情報拡散力に対して矛盾を与える内容とも言えなくありません。もちろんケースによって情報の広がり方に差があることは分かっていますし、炎上が起こった際の解決策についてもUCCのキャンペーン事例しかり、また多くの記述をそこかしこで見かけます。

もちろん本書「つぶやき進化論」においても、起こった問題に対して真摯に向き合い対応していくという事例が多く紹介されています。

個人的に言いたいことは、本書を含めあらゆるソーシャルメディア系の書籍についてその内容や事例を多く取り入れていく中で、すべてを鵜呑みにするのではなく自身の尺度と情報経験を元にそれぞれを取捨選択していくことが大切なのではないかなということです。

これについてはドラッカーもこう述べています。

知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。(創造する経営者)

書籍やインターネットや各媒体から取り入れる情報はあくまで「情報」であり、それを取り入れただけでは何の役にも立たないということです。インプットした内容を生かすも殺すも、それを「知識」とするか否かにかかっていると考えられます。

冒頭から述べてきたように、個人的には珍しく誉めるより指摘する珍しいレビューとなってきています。

その他本書に関しては、オバマ大統領の選挙戦がいかにソーシャルメディアによって成し遂げられたかを詳細に分析していますが、ここではYoutubeでの動画再生回数やFacebookでのファン獲得数といった、ソーシャルメディアでの「数」に関しての記述も多くみられます。「数」は情報に分かりやすさをもたらしますが、ひとえに「数」の大きさのみに注目しているとさっき述べたような矛盾にぶつかる場合もあります。この場合でいえばYoutubeの再生回数が多いといっても好意的に見られたのか、悪い内容として見られたのかなどですね。

ただし、この辺りについてはさすがに様々なフォローが記載されています。特に未来における検索連動型広告についての記述は、多面的かつ分かりやすく捉えられた指摘がとても参考になりました。

実は先進適時例の豊富な良書

ツイッターノミクス TwitterNomicsそう、ここまで比較的本書の内容を疑問視するようなレビューを書いてきましたが、それはほんのわずかな部分で、大半は非常に参考になることの多い良書でした。こと事例に関しては様々な業種について非常に多く紹介されており、その種類も好例から失敗例にまつわるまで多種多様。故にソーシャルメディアをクライアントに提案する側としてはかなり引き出しを増やすことができると感じました。その点では名前も似ている「ツイッターノミクス TwitterNomics」と通じる部分も多く感じました。

事例については翻訳書ということで海外、特にアメリカにおける事例が多いため、日本で使えるのかという疑問を持たれるかもしれませんがそうでもないと考えています。何故なら今日本で動いている有名なソーシャルメディアの多くが、元々海外で生まれ日本に持ち込まれたという事実です。これについてドラッカーはその名言を持って強烈に後押ししてくれます。

未来を予測しようとすると罠にはまる。未来を語る前に、今の現実を知らなければならない。現実からしかスタートできないからである。未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。

今の日本からみた場合、アメリカで今起こっているソーシャルメディアの最新の事例を紹介する本書が、まさに未来を見通す道具と言えるのではないでしょうか。

関連記事一覧

  • コメント ( 2 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. 黒瀧

    はじめまして!黒瀧と申します。
    Twitterの本を探しておりましたらこちらのブログにたどり着きました。
    とてもきめ細かい書評で非常に参考になります。
    また細かく段落分けもされておりとても見やすいです♪
    他の書評ブロガーとは視点が異なり、とても興味深く記事を拝見しました。
    またブログにお邪魔しますね(^^)

  2. admin

    >黒瀧さま

    はじめまして。コメントありがとうございました。
    ブログ拝見しましたら、以前Youtubeでフォトリーディングの動画を見た際に拝見したお顔だったので驚きました!これも何かのご縁かもしれませんね(^^)

    こちらこそよろしくお願いいたします~。