スノーデンファイル【読書レビュー】

スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実レビュープラスさんから「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」を頂きました。スノーデン関係の本は前から一つは読んでみたいと思っていたのでありがたいです。

エドワード・スノーデンは2013年、NSA(米国家安全保障局)が収集していた世界規模の機密情報を持ち出し、全世界に向けて自らの顔と名前、肉声とともにそれを公開した人物で、本書では「世界一のお尋ね者」と評されています。

本書ではNSAに所属する以前からのスノーデンも取り上げています。技術系サイト「アルス・テクニカ」での活動(投稿)の様子から、実は日本で働いた経験があったり日本文化への興味を持っていた頃、様々な職歴を経ながら積み上げたITスキルなど、ページをめくるごとにスノーデンがどのような軌跡や思考の変化を辿ったのか、分かりやすく見ることができます。

タイトルに「スノーデン」が入っているのでスノーデンの自伝に思われる部分もありますが、実際にはもう一人の主人公としてNSAが取り上げられています。英国の政府通信本部(GCHQ)と蜜月の連携を取り、世界中のあらゆる情報を収集していたこと、またそのやり口について、「これがフィクションなら想像し得ること」と思われるようなことが実は現実のものだったという衝撃が、ある意味で本書の醍醐味でもあります。

なかでもタイムリーなのはインターネットからの情報収集です。近年では電子マネーのビットコイン騒動のほか、ネットバンキングにおけるサイバー犯罪などは連日取り上げられています。ソーシャルメディア全盛のなかビッグデータへの注目が集まるようになり、情報の量は飛躍的に増え、しかしその情報の取得は以前より容易になっているケースもあります。

インターネットというと一見目に見えないバーチャルな世界のことというイメージがあるかもしれませんが、実際のところそのインフラは海底ケーブルというごくリアルな物質によって支えられています。NSAやGCHQなどはこの海底ケーブルを抑え、かつその諜報活動に関わる法規制を巧みに乗り越え、あるいは法を無視したに等しい方法で、あらゆる情報を国・個人を問わず集めていきました。

この動きについて9.11以降のテロ対策における必要手段としてその正当性を主張する動きもあるようですが、一方ではドイツのメルケル首相など諸外国の要人に対する個人情報まで収集していたことが明るみに出るなど、活動における正義が疑問視されている部分も多々見受けられます。

上記のように、本書の主人公はエドワード・スノーデンという人と、NSAという国家組織の二大巨頭と言えます。個人的にはどちらも興味深く読んでいたのですが、醍醐味はスノーデンの暴露にいたるまでの変遷です。

いかにスノーデンが用心深く行動して協力者に接触し、世紀の大暴露を行うまでに慎重を期したか。またそれを完遂して世界一のお尋ね者になった後、どうすれば身を守れるか。アメリカが国の威信を懸けて追い、そこから逃げるスノーデンのやり取りは息詰まる緊張感を感じさせます。

テロなどの暴力行為から国を、人々を守るために取られた情報収集という手段。しかしそれが逆に国を、人々を危険にさらす可能性をも秘めた諸刃の剣。「情報」というものの二面性をよくよく痛感できる一冊です。

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