佐川急便の人材マネジメント術「佐川萌え」
装丁を見た際、どこかで見たことがあるような…と感じ思い出したのが「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。ビジネス系とは無縁のようなイラストで、書店で買うのがはばかれるような気まずさを思い出しました。しかし装丁とは裏腹に評価の高かったもしドラよろしく、本書も個人的にはとてもよい内容で、想定(装丁?)以上の良書でした。
帯に書いてあるキャッチコピー「佐川急便のマネジメント術をお届けにあがりました!」の通り、本書は佐川急便のマネジメント、特に顧客中心の思想とそれを支えるための人材マネジメント手法について主に取り上げられています。
最近テレビや雑誌で佐川急便のSD(セールスドライバー)の素敵さが取り上げられることが多いそうですが、なぜSDが女子のハートを掴んで離さないのかについて、その理由を取り上げるところからスタート。鍛えあげられた肉体や誠実さを感じるところなど男の私から見ても「なるほどそれはモテて然るべし」と思うようなポイントが多々出てきます。ざっくり言うなら「モテたきゃ佐川マンになりなさい」です。
顧客と直接相対するSDの評価が高い根拠になってくるのが、行動指針ともなる「飛脚五ヶ条」「行動十訓」に挙げられる顧客中心のミッションです。徹頭徹尾顧客を中心に考え、顧客のために何をすべきかを常に意識するよう、新人研修から徹底して教えられ実践することで、社のミッションを身体共に浸透・実践させることが何より重視されているのが本書を読んでいると伝わってきます。
また、現場の最前線に立つSDこそが佐川急便のブランドそのものであるという理念から、社としてのブランド確立より社員一人ひとりのパーソナルブランディングを重視しています。しかしそれだけではなくチームとしての重要性や強みを活かすための組織づくりや従業員満足度(ES)への配慮も欠かされておらず、まさにドラッカーが言うところの「人こそ最大の資産」を体現する様が見て取れます。
さらには成長の要素として欠かせないイノベーションについても、女性社員の店長採用による組織改革などについても触れられており、これで良しとするような停滞感は感じられません。
終盤には東日本大震災に際して佐川急便がどのように迅速に行動したのか、また自身も被災者である社員たちが現場でどのように考え行動したのか、この辺りの描写は一種感動すら覚えるような内容で、改めて「顧客中心とは何か」を考えさせられます。
なぜ佐川急便が顧客満足を得られるのか。以下のような言葉でまとめられています。
それは、結局のところ、打算ではなくて捨て身で他人のために尽くすからではないでしょうか。そういう人は、究極的なところで信頼を得るのです。人の幸せを願って尽くして初めて人間は輝けるようになるのかもしれません。
全体を通して分かりやすい文章で書かれており、要点については繰り返し触れられるなど読みやすく、何より顧客中心の重要性を再認識させてくれる一冊として本棚に入れておきたいと思います。
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