「ボローニャの大実験・都市(まち)を創る市民力」星野まりこ著

市前です。タイトルの本のレビューです。bologna

知人にお薦めの本を聞いたところ、本書を紹介されたので読んでみました。
著者の星野さんが、劇作家の井上ひさしさんが惚れ込んだボローニャに興味を持ち、ドキュメンタリー番組を作るために取材に訪れ、創造都市の核心に迫る内容です。

ボローニャは、イタリア半島の付け根中央部分にあるエミリア・ロマーニャ州の州都で、ボローニャ自治県の県庁所在地です。人口は37万人。経済専門誌「IL SOLE 24ORE」の2004年度調査によると、「ボローニャは生活しやすい街の女王」となっています。これには、タイトルにある「創造都市」が深く関わっていて、さまざまな事例が紹介されています。

イタリア経済が低迷期に入った1970年代、ボローニャは二つの大きな問題を抱えていた。都心部の空洞化、そして、世界を席巻するアメリカ型の大資本・大企業への対抗策である。

この時、製造業が戦後復興の勢いに乗ったこともきっかけとなりましたが、親会社の技術を使っても異なる製品を作り共倒れを防ぐ平等な関係の独立起業で、奇跡の経済復興を遂げています。「スピン・オフ(付随的派生)」という言葉を聞いたことはありましたが、ボローニャから生まれた独特の企業精神だったとは、初めて知りました。

取材する過程で、著者はホームレス協同組合や文化保存に携わる人たちと出会います。そこで見えてくるのは、学校・財団・行政府・組合・企業など様々な組織が相互に関わり合い、長期で社会の問題解決に取り組んでいる様子です。青森市が30万人なので五所川原市を足してほぼボローニャと同じ人口になります。そう考えると、遠くの国で起こっていることとは思えません。日本も経済を始め福祉・教育と課題が山積していますが、小規模だからこそ取り組めることがたくさんあるのだなと考えさせられた1冊でした。

関連記事一覧

  • コメント ( 2 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. asaoj

    いい本に出会ってますね。
    市前さんの興味が引き寄せたのだと思いますが、今後このような考え方は日本だけではなく全世界で必要になります。
    ”小規模だからこそ取り組めることがたくさんある”
    すごく良い気付きですね。

  2. Ichi

    この本をご存知だったんですね。市民の意識の高さに驚きました。
    日本にもNPOはたくさんあります。どれも必要な活動で、それをいかにして継続させるか?はボローニャのように相互に協力関係(投資を含め)を築く必要があるのだと思いました。