ソーシャルエコノミー【読書レビュー】
本が好き!からいただいた書籍「ソーシャルエコノミー 和をしかける経済」を読みました。タイトルにあるようにソーシャル、とりわけソーシャルメディアについての考察がメインな書籍です。
まず最初に驚いたのは、巻末の解説を経営学者として世界的に有名な野中郁次郎さんが執筆されていたことです。経済や経営関連の書籍に野中さんが共著や解説に登場するのはよく見かけていましたが、ソーシャルメディアをテーマにした書籍への執筆というのは知る限りなかったと思うのでまさかという感じでした。ちなみに帯には村上龍さんのコメントもあり、様々な集合知でもってソーシャルメディアをテーマに本書が書かれていることは(本書内にも記載されていますが)読む前からかなり引きの強い印象がありました。
様々なビジネス事例を紹介したハウツー本は多々ありますが、本書はソーシャルメディアの本質と実践の方法について普遍的な要素を体系化しているという印象です。過去から現在に至るまでのメディアの変遷や流行を具体的な事例で紹介があったり(人によっては全く反応できない話題もあるかもですが、個人的には大いに共感点がありました)して、文章も比較的平易で読みやすい印象です。文体についてはハウツー本にありがちな冗長な印象はなく、適度な間もありながら要点をうまくまとめられた感じで読み進めやすかったです。
「祭り」というキーワード
本書で気になったポイントのうち特に気になったのは「祭り」という点です。多様な目的を達成するためにソーシャルメディアの特性を把握し、順序立てて「祭り」につなげていく方法についても書かれていますが、この「祭り」という言葉は最近様々な書籍でも目にするキーワードだと感じています。
例を挙げると神田昌典著「2022―これから10年、活躍できる人の条件 」では、過去の日本がどのように時代の転換期を乗り越えてきたのかについて、戦争と祭りをピックアップしています。防災に関わる課題や地域コミュニティの減少、果てはビジネスに関わるあらゆる問題を解決する方法として「祭り」の重要性が説かれています。以前これを読んだ時はあまりピンと来なかったのですが、ソーシャルエコノミーを読んで祭りについての重要性とポイントがつながってきたような気がしています。富士宮やきそばや八戸せんべい汁などのB-1グランプリに関する事例では特に祭りの要素と、パワーの起点になるポイントについて分かりやすい事例として取り上げられています。
「価値共創」や「同好コミュニティ」なども分かりやすいキーワードとして紹介されていますが、この辺りは以前MAKERSについてのレビューを書いた時にも触れた「オープンソース化とコ・クリエーションとの関係」の中のコ・クリエーションな要素が垣間見える部分でもあります。ユーザーと企業が共創していく方法や流れはカゴメの凛々子や無印良品の事例などで分かりやすく紹介されています。
ソーシャルメディア関連の書籍や情報に触れる中で繰り返されるのは、これまでのメディアを使う方法と同じやり方ではうまくいかない、むしろ発想の逆転が必要なことに警鐘が鳴らされることが多いのですが、マスメディア軽視までいくとそれもまた視点が足らないという面もあります。なんだかんだで普遍的に重要なポイントとして、商品やサービス自体に魅力や強み、人に伝えたくなるような要素が必要なわけで、そういう要素を持ったものであれば自然とマスメディアが拾ってくれる可能性も広がってきますし、ものによってはそこが重要な一つの通過点にもなり得るわけで。またソーシャルメディアとマスメディアそれぞれの情報の流れ方も異なる面があり、この辺りをよく理解しておかないと「うまくいってるはずなのに何故か思ったような成果になってない」という場合もあるのかなと思うポイントが多々あります。こうして考えてみるとソーシャルメディアという一ジャンルの深さをしみじみと感じる反面、普遍的なポイントもあるわけで結構面白そうなテーマだということを再認識している次第です。
上でも書きましたが、ソーシャルメディアに関する法則の一つについて分かりやすく説明されている箇所もあり、実務的にも使えるポイントが掲載されています。また、Webに偏ってはおらず比較的一般的な話題も多く取り上げられているので、幅広い職種の方にも読みやすいと思います。
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