じゃらんのフェイスブック騒動にみる「顧客」の種類

大手宿泊予約サイトじゃらんnetが、登録している宿泊施設のFacebookページを無断で作成していた件が話題になっています。以下47newsからの引用です。

宿泊施設のページ無断作成 じゃらん、批判受け閉鎖

リクルートが運営する宿泊予約サイト「じゃらんnet」が、掲載している全国約1万6千軒の宿泊施設の公式ページを無断で作成して会員制交流サイト「フェイスブック(FB)」上に公開していたことが30日、分かった。同社は一部の施設から抗議を受け、いったん全ページを閉鎖した。

既に独自のページを公開している施設もあるが、じゃらんのサイトを通じて予約を受け付けた場合、報酬を支払う契約になっている。無断作成された公式ページにはじゃらんサイトへのリンクが張られており、施設側から「施設が築いたブランド力を使って閲覧者をじゃらんサイトに誘導、利益を得ようとしている」との批判が出ている。

この件が明るみになってメディアで取り上げられ始めたのは7月の終わり頃ですが、ブレーンからの情報によれば結構前にさかのぼった話だそうです。

現在の日本での宿泊予約サイトといえばじゃらんnetと楽天トラベルの二大勢力にYahooトラベルやその他の宿泊予約・クチコミ系サイトが続く形になっていると思いますが、ブレーンからの話によればここのところじゃらんの動きや方針が少しおかしい気配があるとのことでした。

ブレーン曰く「楽天トラベルは一般のユーザーと宿泊施設の中間に立ち位置を据えてバランスをとっている感じだが、じゃらんnetは一般ユーザーのことだけを考えているように見える」そうです。

運営側であるじゃらんnetからすれば、顧客=一般ユーザーというコンセプトで戦略を動かしてきたのかもしれません。もちろんそれはそれで正しいことですし、「企業の目的は顧客の創造である」としたピーター・ドラッカーの言葉にも合致します。しかし個人的にじゃらんnetはひとつ重要なことを見落としているのかなという感じがしています。

顧客は一種類ではない

ドラッカーは顧客は一種類ではないと言います。

ほとんどの事業が少なくとも二種類の顧客を持つ。カーペット産業は建築業者、住宅購入者という二種類の顧客を持つ。この両者に購入してもらわなければならない。

生活用品のメーカーは主婦、小売店という二種類の顧客を持つ。主婦に買う気を起こさせても、店が品を置いてくれなければ何にもならない。店が目につくよう陳列しても、主婦が買ってくれなければ何にもならない。

これはあらゆる業種に当てはまる言葉だと思いますが、今回のじゃらんnet騒動の根本の一つはここにあると感じています。要は二つの顧客に対するそれぞれのバランスが不均衡になっているのではないかということです。

もちろんじゃらんnetとしては日本でもユーザー数が増えている話題のフェイスブックに、各宿泊施設のフェイスブックページ(フェイスブック内に構築できるサイトのようなもので、ユーザー登録をしていないユーザーでも一部閲覧可能かつ検索エンジンでも検索できる)を用意することで施設のPR効果を上げるという目的もあったかもしれませんが、今回はじゃらんnetへの過度なSEO対策と捉えられて批判を浴びることになったようです。

今回の騒動についても、もし平素からじゃらんnetが一般ユーザーに対するサービスと同様に、もう一つの顧客である宿泊施設に対しても同様のサービスや配慮を提供していれば違った形で受け止められたのかもしれません。

ソーシャルメディアに力を入れたいのは分かっているが・・・

現在のマーケティングにおいては、ソーシャルメディアを考慮しない企画を提案することの方が少なくなっているのではないかと思います。これは私がWeb制作者だからというわけではなく、あらゆるものがソーシャルメディアの影響を受ける昨今においてはもはや業種を問うものではないと感じているからです。

しかし実際の企業はソーシャルメディアに対して一定の理解はあるものの、それに本腰を入れて戦略を練り、実行して成果を上げているケースはまだ少ないのではないかと思っています。「ソーシャルメディアってそもそも何?」「twitterやれば良いんだろうけど、つぶやく時間もネタもなければそれをやれそうな担当者もない」「クレームが入ったらどうしたらいいか不安」「そもそもそれぞれの機能やメリットがあまりイメージできない」等々、ソーシャルメディア対応に関しての問題は山積みといった感があります。

個人的にもこの問題についてはクライアントへの提案や企画における課題の一つではありますが、色々と模索しながらアイデアを日々積み重ねているといったところです。

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